懸垂が一回もできない人でも、心配はいらない。懸垂以外の方法で懸垂に使うための筋肉を疲れさせれば、徐々に筋肉が成長し、やがて懸垂ができるようになるからだ。ここでは例として五つの種目を紹介したい。
ひとつめはバーティカルプルだ。これはポール・ウェイドの著書
コンヴィクト・コンディショニング(邦題: プリズナートレーニング)の懸垂の部で紹介されている運動で、斜め懸垂からさらに負荷を減らしたものとも言える。何かしっかりつかまれるものを探し、なるべく近づいて掴まったら体を背中側に傾け、なるべく背中の筋肉を使って元に戻る。
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何かにしっかりつかまる |
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体を傾け、また戻る |
ふたつめは斜め懸垂である。斜め懸垂は同じく書籍
コンヴィクト・コンディショニングで懸垂の部第二段階目として位置付けられている。斜め懸垂は別名が多く、ホリゾンタルプルであるとかオーストラリアンプルアップであるとかインバーテッドロウであるとか様々な名前で呼ばれているが、それほどメジャーな種目だということなのだろう。よく小型の公園にある120cmと90cmの二種類の高さがセットになった低鉄棒が使いやすいが、初雁公園にはそれがないので、下記の画像では平行棒の支柱を使用している。
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負荷は角度で調節できる |
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肩甲骨を意識しつつ動く |
3番目は、ぶら下がりである。慣れないうちは懸垂に使う筋肉より先に握力が尽きてくる時がある。慣れていても
雨の日などは濡れた遊具にぶら下がるためにかなり前腕の力が消費される。なお、ぶら下がる時は肩を痛めないよう、最新の注意を払わなければならない。ぶら下がりについては書籍
コンヴィクト・コンディショニングの続編
コンヴィクト・コンディショニング・2(邦題: プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編)で詳細に解説されている。
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ぶら下がってひたすら耐える |
4番目はフレックスハングである。ぶら下がりと同じくらいシンプルな運動で、ジャンプして懸垂のトップポジションに入り、そのままひたすら耐えるという運動だ。肘を完全に曲げきった状態でさらに曲げる方向に重さが入ると肘を痛めるので、そうならないよう注意したい。懸垂のトップポジションに入ったら、同時に膝を折りたたみニーレイズの姿勢をとると、これはダンゴムシ運動と呼ばれ、逆上がりの前段階として練習に取り入れられているとのことである。だがダンゴムシ状態も、かなりきつい。
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この状態でひたすら耐える |
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ダンゴムシ運動 |
5番目はネガティブ懸垂である。ネガティブ運動とは、どのような手段でもいいのでまずトップポジションに入り、できるだけゆっくりボトムポジションへと移行する運動である。つまりジャンプして懸垂のトップポジションに入り、できるだけゆっくり体を下ろし、ぶら下がり状態へ移行する。ゆっくりやるほどきつくなる運動である。快適に懸垂できる高さの鉄棒よりもやや低い、だいたい自分の身長ぐらいの高さの鉄棒がやりやすい。
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できるだけゆっくり下がる |
こうしてざっと見ていると偶然だろうが、行って戻る系2種、ひたすら耐える系2種、そして両者の中間のような耐えながら戻る系1種に分類できる。これら五種目は懸垂ができるようになってもたびたび立ち返る、優秀な鍛錬法であると思う。そしてこれらは高高度鉄棒を含む様々な高さの鉄棒があればとてもやりやすい。懸垂ができる人間が少ないから鉄棒はいらない、と言う人がいれば、鉄棒が無いからこそ懸垂ができる人間が少ないのだ、と言いたい。