2019年5月3日金曜日

鉄棒は危険か

川越水上公園にあるHH-06について書いた記事で、ガードパイプがついた状態の方が危険なのではないか、と書いた。しかしよくよく考えてみるにつけ、例えばHH-06からガードパイプを取り去り、スプリング経由ではなく支柱に鉄棒をガッチリ固定し、完璧な鉄棒を作ったとして、その鉄棒は危険ではないのかと問われると、私もこれを危険ではないと言うことは必ずしもできない。鉄棒運動において考えうる最悪の事態は、鉄棒からの落下による死亡事故である。つまり鉄棒運動は、HH-06の設計者の考えるとおり、危険なのだ。これは真実であろう。
だがそれでも腑に落ちない点はある。鉄棒以外の遊具はどうなのかと。例えば以前も書いたようにHM-01の攀登棒でクラッチフラッグを行った際に上腕の内側が内出血したとか、HM-01のバランス台部分をプッシュアップバー代わりにしたら汗で滑って胸を打ち付け肋骨にヒビが入ったか折れたかしたとか、HM-01の雲梯部分で懸垂をした際にボトムポジションで無意識に肘関節をロックアウトしていたせいで関節に負荷が移り肘に痛みが残ったとか、マッスルアップをしていたら左手第5中手骨のあたりが痛くなったとか、前腕を疲れさせた後吊り輪でスキンザキャットをしているとうっかり手を滑らせて頭から落ちた時のことを想像してしまって恐怖を感じるとか、ブランコの柵につかまってエルボーレバーをすると頭の側に傾いた時にやはり恐怖を感じるとか、いちいち挙げればきりがないが、鉄棒は危険であり鉄棒以外は安全であるなどとは言えない。
いや遊具だけではない。川越水上公園に行くために自動車や自転車を使って移動するのだとすると、交通事故を起こして死ぬか、あるいは誰かを殺してしまうかもしれない。これを避けるために徒歩で移動したとしても、やはり歩行中誰かにぶつかって転倒し自分が死ぬか相手を転倒させて殺すかしてしまうかもしれない。では人に会わないよう自宅に引きこもればいいのかというと、地震や落雷や火事があるかもしれないし、家から出なければ食料の調達もままならず、いやそもそも仕事しに行けないから収入もなくなるであろう。また川越水上公園はその名のとおり大規模なプールがあり、濡れたプールサイドで走ったため転んで怪我する危険もあれば、水泳には必ずつきまとう溺死の危険というものもある。
つまり本当に問われなければならないのは、鉄棒運動は危険か、ではなく、世の中にあまたある危険の中でなぜ鉄棒運動の危険だけが取りざたされなければならないのか、という問題だったのである。
そして遊具というものが語られる際ことさら鉄棒運動の危険性のみが槍玉に挙げられているのだとしたら、HM-01を使った感想の記事で少し触れた、私が感じた設計者の鉄棒に対する忌避の念というものも、単なる被害妄想ではなくそれなりの現実性を帯びてくるのである。