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川越水上公園の遊具 |
川越水上公園の一画に日都産業の遊具が並べて設置されている場所がある。8種類あるが、程度の差こそあれ、どれも
私が以前考えた分類法に従えば、拘束型に入る遊具ばかりである。つまり目的が限定され、設計者の意図しない動作を封じるため構造が複雑化した遊具である。中でも
ツイストボードと
スプリングバーは鉄棒として使えそうで使えない、隔靴掻痒を形にしたような遊具である。
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HH-06 スプリングバー |
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説明板 |
スプリングバーの説明を読むと、ぶら下がりや懸垂運動に使うことが意図されているようなのだが、問題はその後にある「スプリングが飛びついた時のショックを和らげる」という記述である。スプリングバーの高さは180cmと、たいていの人なら飛びつかずにつかめる高さであるが、そんなことよりも重要なのは、飛びついた時にショックを和らげなければならないような状態にある人は、そもそもバーに飛びついてはならないし、ましてぶら下がりや懸垂などもってのほかであって、そのような人に必要なのは治療やリハビリである。そこまでいかなくともまだ体力が不足している人などは、斜め懸垂のボトムポジションでひたすら耐えるような、足をついたぶら下がりで前腕や肩を鍛えたほうがいい。このやり方なら体の角度や足を置く位置で負荷を調節することもできる。幸い8つの遊具の中の
足ツボウォークの手すりが低鉄棒として使用可能な形状にある。
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手すりを低鉄棒として使用する |
そしてさらに
公式サイトの商品解説ページを見た時、衝撃的な文言が目に飛び込んできた。以下に引用する。
支柱とバーの間をスプリングで連結し、とびついた時の衝撃をやわらげる新発想の懸垂器具です。 ぶら下がり運動をソフトな運動感覚で行え、また鉄棒運動を防止するためのガードパイプを付けた安全設計です。
つまりこの遊具の設計者の言い分では、鉄棒運動とは危険であり、そして危険な鉄棒運動を防止すれば安全な設計である、ということらしい。念のため付け加えておくと、この遊具は大人用を前提として設計されていて、実際に遊具本体に大人用と書いたシールが貼られている。つまりより正確には、公園内で大人が大人用遊具による鉄棒運動をするのは危険である、というのがこの遊具の設計者の言いたいことだということになる。
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大人用と書かれたステッカー |
実際にこの遊具で鉄棒運動を試したところ、いわゆるガードパイプの部分にぶつからないよううまく足の角度を調節しつつ足を地につかない逆上がりをくるくると数回ほど回った感想としては、ガードパイプはない方が安全であると感じた。
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ガードパイプにぶつからぬよううまく脚を上げていく |
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そして回転する |
つまり実際にはガードパイプでは鉄棒運動を防止しきれず、また鉄棒運動そのものが危険であるというよりガードパイプがついた状態で行う鉄棒運動のほうが危険になっている。物理的に行えないのではなく、行うと危険なのでなるべく諦めるよう誘導する構造というのは、例えるなら川に落ちたら危険なので人が近づかぬよう河原に地雷を設置する、というような行いとなんら変わらないのではないか。
あるいはスプリング機能を付加したので、 スプリングのしなりが鉄棒運動の障害になり危険なのだ、という反論があるかもしれない。しかし前述の通りこのスプリングそのものの存在意義が希薄なのであり、ぶら下がり時にしなりを楽しみたいのであれば、初雁公園にあるようなターザンロープ系遊具にぶら下がるか、
樹の枝にぶら下がればよい。水上公園は敷地面積が広く樹木も多いので、ぶら下がり心地のよさそうな樹を探すだけでもいい運動になりそうである。
このような遊具を見るにつけ、拘束型遊具はその利用者の動きのみならず、思考までをも拘束していく、そんな風に思えてならない。