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伸びてきたタケノコ |
初雁公園のHM-01のすぐ隣に竹林があり、懸垂をしていると常に視界の隅に竹がある。そしていつの間にかその竹林の中でタケノコが伸び出している。そのタケノコを見てはたと気づいた。雨後の筍という言葉があるが、これは竹の成長にとって
雨というものが重要な役割を果たしているということに他ならない。そしてなぜ今
懸垂のための遊具が滅びの危機に瀕しているかといえば、竹にとっての雨のような存在が無かったか、あったとしても足りなかったからである。
では懸垂のための遊具にとって、竹のための雨に当たるような存在とはなんだろうか。言うまでもなくそれは懸垂である。現状、私の見た限りではHM-01で懸垂運動を行っている人は、0ではないが少ない。市内に懸垂できる場所が一箇所しかないにもかかわらず、人口に比べ圧倒的に少ない。本来なら土日は遊具に行列ができてもおかしくはないはずだ。
なぜなのか。みんな懸垂に興味がないということではないはずだ。市内にはフィットネスジムの数が増加しているし、それは運動に関心を持つ人が増えているという証拠でもある。大抵のジムではラットプルダウンマシンが人気である。老若男女、初心者から実力者までラットプルダウンマシンを実によく使う。ラットプルダウンマシンとは懸垂と同じ動きを、ワイヤーの付いた棒を引くことで行うことができるマシンである。つまり背中の運動というものに、みんな興味を抱いている、かなりの需要があるということなのだ。
ではなぜHM-01の利用者が少ないのか。私が思うに、この原因はただ単に知名度がないからというだけのことである。みんなこの公園この遊具について知らないのだ。知らないということは存在しないのと一緒だ。なぜ知らないのか。知る術がないからだ。
例えば市内の誰かが公園で懸垂をしようと思い立ったとする。しかしどの公園にも必ず鉄棒やら雲梯やら平行棒やらが設置してあるような状況ならいざ知らず、近所の公園に低鉄棒があればかなり幸運なほうで、単なるベンチがあるだけの空き地という公園も多い中、どうやって懸垂したらいいのだろうか。本当に存在するのかどうかもわからない懸垂遊具を、まず探すところから始めなければならない。
では公園や遊具に関する情報をどのように探したらいいだろうか。ネットを利用してとなると、市役所のサイトかGoogleマップを使うことになるだろう。しかしこと懸垂可能な公園を探すとなると、市役所のサイトは全くもって不完全であり、せいぜい公園リストの入手程度の意味合いしかない。このリストを元に当たりが入っているかどうかさえ判然としないくじを延々と引いていくことになる。Googleマップは航空写真とストリートビューを活用することで、公園巡りをかなり省力化できる。しかしGoogleマップも完璧ではないので、樹木によって遮られるなど必ずしも敷地内が明瞭に確認できるとは限らないし、車両が入れないような場所にある公園はストリートビューが使用不能である。またGoogleマップに載っていない公園もある。
つまり、人のせいにはしたくないが、初雁公園のHM-01があまり人に知られていない原因は、この遊具に関する情報が、市役所のサイトに載っていないということも大きい。市内において唯一無二の、
完璧な懸垂ができる遊具であるにもかかわらず、市役所のサイトでこの素晴らしい遊具の存在を知ることは不可能なのだ。これがもし図書館と書籍ということであれば、図書館のサイトかあるいは図書館に置いてある検索用端末で詳細な検索をすることが可能である。どのようなジャンルで著者は誰でどのような内容の本なのか、その本が市内のどこの図書館に置いてあるのかあるいは置いていないのか、貸し出し中なのか、貸し出し可能なのか、開架に置いてあるのか、閉架に埋もれているのか。
公園も遊具も税金が使われているのは図書館の本と同じであるのだし、乾燥地帯に竹を植えるような真似はやめて、もっとわかりやすくすべきだし、市にはそうする責任がある。懸垂せんとする者たちに遊具の存在を教えれば、懸垂遊具は雨後の筍のように増えていくはずである。